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ゲーム、アニメ、映画の感想

【ネタバレ注意】映画 HELLO WORLD 考察

HELLO WORLD を見た考えを整理するために。

ネタバレだらけです。

 

 

1. 作中に出る表現の意味

映画で出てくる順番に記す。

(1)赤いオーロラ

仮想世界である京都に外部から(おそらくリアル)何者かが侵入した。

(2)3本足のカラス

3本足のカラスといえば八咫烏。道案内をするもの。実際に直実を10年後ナオミが出現する伏見稲荷まで本を奪って導いた。ここで重要なのは10年後ナオミが来るよりも先にカラスが来たということ。

(3)グッドデザイン

一行瑠璃を助けるための力。同時に仮想世界であるということを強く意識させるアイテム。カラスが右腕に憑依することでグッドデザインを使えるようになる。

(4)最強マニュアル

3ヶ月後に一行瑠璃と堅書直実が交際する未来にたどり着くための手順。

(5)10年後ナオミが時々チェックするスマホのバッテリーメーターのようなゲージ

最強マニュアルに従って行動を起こし成功するたびに10年後ナオミが確認している。10年後ナオミは3ヶ月間の同期をとり過去と同じ3ヶ月間を送らせるために直実に最強マニュアルを守らせている。このゲージを無くすか貯めるかが10年後ナオミの目的。

(6)大湖底都市

瑠璃祖父の蔵書にあった本。瑠璃にとって思い出の本である。

(7)貸出カード

鴨川で「貸出カードに一番に名前を書けると気持ちいい」と話す。

大湖底都市の貸出カードにも1番に一行瑠璃と書かれている。

(8)古本市ボヤ事件

一行瑠璃と付き合うきっかけとなる事件。祖父の蔵書が焼失して落ち込む一行瑠璃を励ますことで交際を始めることになる。最強マニュアルに記された過去の行動ではとにかく声をかけ続けることだったが、直実はグッドデザインを使いダンボール一つぶんだけでも復元することに。その中に瑠璃が自分の目で確かに焼失を確認した大湖底都市があることから直実の「一箱だけ別の所にあったんだ」というのは嘘で、直実が寝ずに一晩でなんとか古本を集め直したんだと瑠璃にはわかった。図書委員として一緒に行動し続けて来た上で自分のためにこれだけしてくれたならそりゃ告白もOKするわ。

(9)狐面

アルタラの自動修復システム。記録された京都を維持しようとする。

(10)宇治川の戦い

落雷による一行瑠璃の死亡を回避するために宇治川花火大会へは行かなかった直実たち。改変を許さない狐面が襲いかかり、自宅にいた瑠璃を宇治川の朝霧橋までワープさせる。直実はグッドデザインを駆使し落雷を阻止した。

(11)10年後ナオミの目的と超えた閾値

10年後ナオミは瑠璃を落雷にあった瞬間と同じ精神状態にさせるために動いていた。閾値が100.0に達したのがその証。アルタラ内にある10年前の記録から瑠璃の精神をサルベージし10年後ナオミの世界で植物状態になっている10年後瑠璃という器に移し意識を取り戻させるのが目的だった。

(12)崩壊する直実世界

一行瑠璃というデータを失った直実世界は喪失の穴を埋められない。外部から直実世界を観測していた千古教授らクロニクル京都はエラーの改善は不可能と判断し直実世界のリセットを選択。直実世界は崩壊への道筋を辿る。

(13)直実を導く声

崩壊した直実世界で何者かの声が直実に呼びかける。一行瑠璃を取り戻すためには10年後ナオミ世界へ渡る必要があると。

羽が落ちること、グッドデザインの力を再び取り戻せることからこの声はカラスである。

(14)10年後ナオミ世界

10年後ナオミ世界は新たに増えた一行瑠璃の精神というデータが原因で狐面が現れる。10年後ナオミ世界も仮想世界であることがわかる。仮想世界から仮想世界への移動なので器がなくとも直実は移動できた。

(15)左下半身不随の10年後ナオミ

直実世界のアバターでは五体満足で自由に闊歩していた10年後ナオミだが、10年後ナオミ世界ではアルタラ内部へのアクセスを試み続ける中電流により左下半身不随となっており杖をついている。アルタラ内部へ潜入するアバターでなくリアルの肉体であることを強調。

(16)京都駅大階段

10年後ナオミ世界から直実世界へ帰るための地点。階段を下ることで10年前の世界へ下るという表現にも受け取れる。でも単に京都駅大階段というランドマークの見栄えがいいから映画のクライマックスをここに持ってきただけだと思う。京都タワーも使えるし。

(17)堅書直実の重複とその死

10年後の世界から瑠璃という圧迫データが消えても狐面が消えないのは2人の堅書直実が存在するから。瑠璃を取り戻すことはもうできないと悟った10年後ナオミは自分を削除して重複を解消するように言う。狐面の攻撃から直実をかばい10年後ナオミは重傷を負う。

(18)10年後ナオミ世界にある直実世界を記録したアルタラの消失

10年後ナオミ世界のアルタラの自動修復プログラムをOFFにしたことで瑠璃が生きているという異なる過去を修正しようとする狐面が止まった。これによって直実世界は記録された過去ではなく新しい世界となる。アルタラは10年前の京都に起きるすべての事象を再現したものであって、逆説的に10年前の京都を再現した記録でなければアルタラではない、故に消失した。千古教授は「開闢、ビッグバンだよ」と言っている。

(19)すべてが覆るラスト10秒

HELLO WORLDという作品のキモはここにすべてがこもっており今までは壮大な前フリだった。直実をかばって重傷となった10年後ナオミはそのまま死ぬが、ここで閾値が100.0を超えた表示がされる。目覚めたナオミが見たのは歓喜に湧くプロジェクトチームと自分を迎える一行瑠璃だった。10年後世界でナオミが瑠璃を快復させるために直実世界からサルベージしていたように、ナオミもまた10年後世界からサルベージされたのだ。目覚めたところが京都ではなく月面基地である。つまりクロニクル京都の世界ではありえない。この最後に目覚めた世界こそがリアル世界であることを示している。

 

2. 疑問と予想

疑問1、本の復元というズレ

古本市ボヤ事件において最強マニュアルではとにかく瑠璃に声をかけ続けたが、直実はグッドデザインを使った本の復元を行う。10年後ナオミも結局はそれを容認し復元を手伝った。10年後ナオミの計画は全く同じ過去を辿らせることではなかったのか?ならばなぜ直実の復元を止めなかったのか?

予想1

ここで重要なのはこの事件を契機として堅書直実と一行瑠璃は交際を始めるという結果であり、その過程は問題ないのかもしれない。

 

疑問2、カラスは何者なのか

10年後ナオミよりも早く直実世界にアクセスし直実を伏見稲荷まで導いたカラス。さらに瑠璃が10年後ナオミ世界へ移動させられ直実世界が崩壊しそうになった時に直実に再びグッドデザインの力を授けた。10年後ナオミが直実世界で動くための使い魔にしか見えなかったが実はカラス自身も意思を持って行動していたのではないか?それは何者なのか?

予想2

直実と10年後ナオミが伏見稲荷で会うという過去の記録通りに辿らせようとしていること。直実世界と10年後ナオミ世界の行き来ができるポイントを把握していること。よって10年後ナオミ世界よりさらに上の世界からアクセスしてきた存在である。つまり最後にナオミが目覚めた世界からの一行瑠璃、あるいはプロジェクトチームのアバターではないか。

 

3. 世界の構造

リアル(月面基地

10年後ナオミ世界(クロニクル京都の一部)

直実世界(クロニクル京都の一部)

上記のような構造になっていると思われる。